4.脊椎骨折による脊柱変形Vertebral fracture
4.脊椎骨折による脊柱変形
脊椎(せきつい)骨折とは
脊椎、特に椎体(ついたい)と呼ばれる円柱形をした荷重部位の骨折では、後方部分の変形が少なく、椎体の圧潰、短縮が起こることにより脊柱が前方へ屈曲し後弯変形をきたします(図1)。
脊椎骨折は主に二つに分かれ、青壮年に多い交通事故や落下などの高エネルギー外傷で生じて破裂骨折と呼ばれる脊椎の前方成分(椎体)から後方成分(椎間関節、椎弓、棘突起など)の全てが破壊され不安定な骨折と、高齢者や骨粗鬆症患者において軽微な外傷で生じる椎体骨折があります。
前者は脊柱変形というよりも急性外傷による脊椎の骨折、支持性の破綻による不安定性や、神経障害が主な症状で、早期の手術治療を要します。
一方で、骨粗鬆症を基盤とした椎体骨折は無症状に発生進行するものが有症状の3倍にのぼると報告されており、「形態骨折」や「いつの間にか骨折」とも呼ばれることがあり、強い痛みを伴わずいつの間にか腰や背中が曲がってきて、レントゲンを撮影して初めて椎体骨折が判明するということがあります。外傷を伴うものでは、受傷直後にはコルセットやギプスなどで固定し、疼痛のコントロールと骨癒合を目指しますが、骨癒合した後も骨折による椎体の変形は残り、一部の患者さんでは、この後弯変形が様々な症状を引き起こします。
椎体骨折後脊椎変形(主に後弯症)の治療
先に述べた破裂骨折以外は、まずは症状に合わせた保存治療を行います。鎮痛剤の処方、コルセット、体幹筋の訓練を行いつつ、骨粗鬆症があれば内服、注射などでの骨粗鬆症治療を行います。
骨粗鬆症を伴う骨折では1つ骨折があると次の骨折を起こす確率が、骨折のない場合に比べて4倍になるとされ、骨粗鬆症の薬物治療が次の骨折リスクを減らすことが報告されています。次の骨折を防ぐことで、変形の進行を予防します。
この様な治療を行っても症状が継続する場合、手術治療を行います。変形が軽度で、骨折部の不安定性、痛みが主な場合には骨セメントを骨折部に充填する椎体形成術や(図3)、後方からまたは前後からの短い固定範囲での脊椎固定術を行います。骨が大きく変形して癒合してしまい、体が大きく傾いてしまい姿勢が保てない場合には、背中からや、側腹部から変形した椎体を切除(骨切り)して脊椎を広範囲に固定する手術が行われます(図4)。