7.首下がり症候群Hanging neck syndrome

7.首下がり症候群

首下がり症候群とは

 人間のせぼね(脊椎)の中でも頚椎が前に弯曲し、首がたれて前を向けない病気のことを首下がり症候群と言います。高齢者に多い病気ですがはっきりとした原因はまだわかっていません。首下がり症候群 の原因は様々であり、病態に応じた治療が必要となります。

首下がり症候群の原因と種類

 古くから首下がり症候群にはミオパチー、パーキンソン病、重症筋無力症、筋委縮性側索硬化症、多系統萎縮症などの神経筋疾患、甲状腺機能低下症、くる病などの内分泌疾患が原因となる疾患が含まれていることが知られていました。Katzらは1996年に頚部伸筋に限局し全身性には進行しない非炎症性ミオパチーをisolated neck extensor myopathy (INEM) と呼ぶことを提唱しました。現在の首下がり症候群はINEMを中心とした特発性首下がり症候群を指しますが、現在でも病態解明は十分にされていません。我々がしばしば遭遇する首下がり症候群には、高齢者のフレイルやサルコペニアに随伴するもの、頸椎手術後の医原性、胸腰椎の成人脊柱変形に合併する例などがあります。

首下がり症候群の症状

 首下がり症候群の最も大きな症状は前を向けない(水平注視障害)ことです。また頚椎の後弯により頑固な頚部痛や、四肢のしびれや麻痺などの脊髄神経の症状を呈することがあります。

首下がり症候群の治療

 首下がり症候群の原因は多岐に渡り、原疾患のある場合はその鑑別と治療が必要なのは言うまでもありません。更に特発性と考えられる中にも保存治療が効果的である症例も存在します。しかし進行した首下がり症候群に対して現在のところ有効な保存的治療に関しては確立されたものはありません。脊椎外科専門医の指導のもと、外固定、筋力訓練やストレッチなどを行っても効果が得られない場合は、手術治療が行われることもあります。一般的に手術は脊椎骨にスクリューを挿入し弯曲を矯正しロッドで固定する手術が行われます。